プチ自分探し-ある犬の物語

On 2005年10月8日 by admin

ありのままの多彩な姿形で良い

そのストーリーは1匹の犬が車からポーンと放り投げられる絵から始まります。

線で描かれるその絵は単純だけれども力強くてとても印象的な陰影を持っています。この手の絵は人をひとつの方向性を持って向かわせるのではなく、ありのままの多彩な想いの姿形で良いとしている懐の深さを持っています。だからこそ「ものごころついた子供」からおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなそれぞれの感じ方ができる一生物(いっしょうもの)に仕上がっています。例えば、子供の頃にこの本に出会って感じた事と大人になっていく中で時々手にしたときの感じ方のコントラストがよりはっきりでるのではないでしょうか。

はじめて読むときは「何も感じない。」ないのです

面白いのは、はじめて読むときは「何も感じない。」ないのです。ひたすらページをめくっていきます。紙芝居の様に場面が次々と展開していきます。最後にほろりと涙が…出てきた人はとても純粋な人です。やはり子供は感情しやすいので涙ぐむかもしれませんね。大人は、多分、また初めに戻ってパラパラと見返すのではないでしょうか?私はそうでした。でも、何回もページをめくっていると印象深い場面がでてきます。私は表紙にもなっている絵が一番印象深いです。新たな出発への決意の目が好きです。たった一度だけ振り返る事で自分自身に言い聞かせている様です。

復讐、達成感、喜び、裏切り・憎しみとの決別、懺悔、後悔、感謝、新たな出会いへの期待、希望、夢。じっとこの目とにらめっこしていると、そんな言葉が溢れてきます。

それぞれの心に響く何かが生まれてくる

すなおに悲しく涙を流し出会いに喜びを感じる子供。イジメ・仲間はずれ、あるいは虐待されてきた心の傷を持つ女性。孤独な道で遥か夕闇の空をじっと見つめる姿に自分を重ね合わせる父親。たくさんの人に囲まれてにぎやかにしていてもどこか自分が本気で楽しめない青年。子供のひきこもりに頭をかかえる母親。それぞれの心に響く何かが生まれてくるのではないでしょうか。みなさんはどんなことろで何を感じるのでしょうか?

この絵本の最大の特徴は文字が無いことです。手紙や文学作品などはよく「行間を読め」などと言われます。この場合は絵間、まさにそれはカイカンなのです。

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